19世紀後半、ダブリンで軍人の子として生まれたロジャー・ケイスメント。
彼のスケールの大きな人生を描いた500頁を超える大作です。
植民地化が現地の人の生活向上のため、ということを信じてアフリカに渡ったものの、
外交官として、コンゴの苛酷な現実、虐待と収奪、植民地化の現実に向き合った主人公。
コンゴの現状を告発し、英国で外交官として評価され、今後は南米、ペルーへ。
ここでも同じような植民地の現状に出会います。
ペルーでも人々を救うべく、事実の調査を行っていくときに、祖国のアイルランド
も植民地化されていることに気づき、アイルランドの独立を目指します。
ドン・キホーテのように空回りしながら。
物語は、主人公が英国の監獄に入れられたシーンと、過去のシーンが交互に
進められていきます。
植民地の驚くべき、狂気の世界。それに抗い続ける主人公の姿は
魅力的な文章とともに、胸を打ちます。
アフリカ、あの残虐だがあまりに美しく、桁外れの苦しみに満ちた大陸はまた自由の地でもあった。
人間が不正な扱いを受け虐待をされていたかもしれないが、他方自分たちの情熱、空想、欲望、本能、夢を、大英帝国では快楽を圧殺してしまう自制心も先入観もなしに、表に出すことができた。