あの、「
わたしを離さないで」のカズオイシグロの短編集です。
「わたしを離さないで」にも音楽が効果的に使われていましたが、
この短編集も音楽にまつわる話です。
愛しているのに分かれてしまうカップル、いつまでも夢を追って現実を認め
ない妻、性格が違うために破局に向かう夫婦、才能はあるけれど見た目が
悪いため(!)に成功しないサックス吹き、才能が花開かなかったチェリスト
の個人レッスン、5つの短編がノスタルジックな文体で淡々と描かれていき
ます。
一番好きなのが「老歌手」。主人公は東欧出身でベネチアの流しのミュージシャン。カフェの演奏
中に昔母親が憧れていた、米国の歌手に出会い話しかけます。その老歌手から、妻のホテルの部屋に
向けゴンドラから歌うので伴奏を頼まれる、という話ですが、単にロマンチックな話にはなりません。
ハッピーエンドではないけれど、暗くありません。
ユーモアの利いた文体で、それぞれ味わい深い短編集です。
夜想曲といえば、こちら。こちらは短編集ではありませんが短い本です。
映画も見て、面白かったという印象は残っています。具体的に覚えて
いるのが、冒頭で主人公が乗ったタクシーの運転手が Ek Do Teen を
歌っていたことだけ、というなんともあてにならない記憶ですが。
このEk Do Teen (Hindi で、1,2,3ですね)は、昔インドの、Kanyakumariで、
雑貨店で流していたのを聞いて、店のオヤジに何の曲かメモしてもらい、
Delhi で探し、買って帰ったテープに入っていた曲です。
Tezaab という映画のサントラで、その1曲目です。リズムがよく、
日本でもよく聞いていたので、
「エクドゥティーン、チャパンチェ、サトアトノ、ダッセギャラー、バラテラ」が頭の中
にこびりついています。
音楽しか聴いたことがなかったのですが、You Tube で画像で見ると、耳からだけのイメージと違って、
ちょっとびっくり。